「がんばっているのに評価されない社員」の扱い、どうすれば?
~中小企業の“もやもや”を整理するヒント~

「あの子、本当によくがんばってくれてるんだけど…」
でも数字には表れないし、他の社員と比べて「評価」が難しい。
そんなふうに、経営者や上司が「評価しづらい」と感じる社員は、どの職場にもいるのではないでしょうか。
中小企業では、評価制度が整っていなかったり、日々の忙しさのなかで「がんばっている姿」は見えているけれど、それをどう処遇に結びつければいいのか分からない…と悩む声をよく耳にします。
今回はそんな「がんばっているけど評価されにくい」社員との向き合い方について、社労士の視点からお伝えします。
1.「がんばっている」とは、どんな状態なのでしょう?
一言に「がんばっている」といっても、その意味合いは人それぞれ。
たとえば… 他の人より早く出勤している
遅くまで残って仕事をしている
いつも一生懸命、真面目に取り組んでいる
急な業務にも嫌な顔をせず引き受けてくれる
…こういった様子を見ると、「がんばっているな」と感じるのは当然です。
ただ、それが必ずしも「成果」に直結しているとは限りません。
会社として評価をする場合、成果(売上、業績、指標など)が重視されやすいため、「がんばっているけど評価できない」という『ギャップ』が生まれます。
とはいえ、こうした「見えにくいがんばり」が会社を支えているのも事実。
まずは、「この人は、どんな風にがんばっているのか?」を、丁寧に言語化してみることが第一歩です。
上司・本人・同僚の間で、「がんばり」に対する認識のずれがないかを見直してみましょう。
2.評価できないのではなく、評価の「軸」が曖昧なだけかもしれません
評価がうまくできないと感じる背景には、評価制度そのものが曖昧だったり、そもそも制度自体が整備されていないという問題があります。
特に小さな会社や創業まもない会社では、評価基準が明文化されておらず、「なんとなくの印象」で評価がされてしまうことも少なくありません。
実はこの「なんとなく評価」は、社員にとっても不安のもとになります。
「私はどこを見て評価されているんだろう?」と分からない状態が続けば、やる気をなくしてしまうことも。
また、「がんばっているのに評価されない」と感じる社員ほど、繊細で職場を大切にしているケースも多いため、「言葉にされない=認められていない」と受け取ってしまうこともあります。
明確な評価軸がないことで、「がんばり損」になってしまわないように、少しずつでも「行動評価」や「プロセス評価」の視点を取り入れていけるとよいでしょう。
たとえば「後輩をフォローしてくれた」「クレームを未然に防いだ」など、数字に見えない貢献にも、光を当てられると理想的です。
3.がんばりを「見逃さない」ための工夫、できていますか?
がんばりを正当に評価するには、「気づく・伝える・記録する」の3つがとても大切です。
日々の忙しさの中では、どうしても「問題のある社員」に目が向きがちで、「がんばってくれている社員」への声かけやフィードバックは後回しになりやすいもの。
でも実は、黙々とがんばっている社員こそ、定期的な承認や対話を必要としているのです。
たとえば… 毎週のミーティングで、1人ずつ一言ねぎらう時間をつくる
月1回の1on1で「最近のやりがい」「困っていること」を聞く
ちょっとした貢献でも、口頭だけでなく社内チャットで共有して「見える化」する
といった工夫でも、「見てくれている」という安心感はぐっと高まります。
「評価制度」までは手が回らなくても、こうした日常の積み重ねで、十分に「信頼の積み重ね」は作れます。
4.それでも評価に差が出るとき、どう伝える?
がんばっているのは事実。
でも、評価に差をつける必要がある場面も出てきます。
たとえば給与の見直し、昇進の判断など。
こうした時に一番大事なのは、「感情ではなく事実をもとに伝える」という姿勢です。
ありがちなのが、「がんばってるんだけどね…」と前置きしたうえで否定的なことを言ってしまい、相手が落ち込んでしまうケース。
伝え方一つで、信頼関係は大きく変わってきます。
こんな風に伝えるのがおすすめです: 「◯◯さんの姿勢や努力は、しっかり見ています。とても感謝しています。」
「今回は△△の成果という観点で判断したけれど、引き続き□□の面でも期待しています。」
評価に差が出たことを「マイナス」に受け取らせないよう、「ここを伸ばせば、次はチャンスがある」と伝えられると、前向きな気持ちで次のステップに進めます。
まとめ
がんばっているのに報われない…。そんな状況が続くと、社員はやる気をなくし、「ここにいても意味がない」と感じてしまうこともあります。
逆にいえば、がんばりをちゃんと「気づいてもらえる」「評価してもらえる」職場は、社員にとって「安心して働ける場所」になります。
中小企業だからこそ、細かい努力や貢献が会社全体に大きな影響を与えます。
評価制度を整えるのが難しくても、日々の対話や感謝の言葉を通じて、「見てるよ」のメッセージを届けていきましょう。
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