「男性育休?ウチにはムリ」から抜け出す会社の共通点とは

~制度はあるのに進まない、その理由と“できる職場”の工夫~

男性も育児休業を取得できる時代。
様々な法改正により、制度面の整備は着実に進んでいます。

しかし実態はどうでしょうか。
厚生労働省のデータ(令和5年)によると、女性の育休取得率は約80%を超える一方、男性は約30%にとどまっています。
「職場の雰囲気」「業務の引き継ぎ体制」「収入への不安」など、さまざまな壁が立ちはだかっているのが現実です。

制度はある。けれど活用されない。
この“ギャップ”を埋めるには、職場の雰囲気づくりやルールの整備が重要です。

なぜ「取れない」のか?よくある3つの壁

1.心理的なハードル

「自分だけ休むのは申し訳ない」
「上司や同僚にどう思われるか不安」
このような“空気”に、実際に制度を利用しようとする男性社員は圧倒されがちです。
育休の取得は法律上の権利ですが、「言い出しにくさ」は依然として根強く残っています。

2.社内文化の壁

「うちには前例がないから」
これは多くの中小企業で耳にする言葉です。
前例がない=制度が使われてこなかった、ということ。
その結果、取得しようとする社員が“実験台”のような立場になってしまい、さらに躊躇するという悪循環が生まれます。

3.手続きや準備の煩雑さ

「育休を取りたい」と申し出ても、社内に明確な手続きルールや担当者がいないケースもあります。
とくに労務担当者が不在の小規模企業では、制度の存在は知っていても“使える状態”になっていないことが多いのです。

取得しやすい会社の共通点とは?

では、実際に男性育休が取りやすい会社には、どんな特徴があるのでしょうか。
いくつかの企業支援を通じて見えてきた“共通点”をご紹介します。

✔️「取ってもいいよ」より「このタイミングでどう?」という声かけ
育休を“取っていい”だけではなく、上司が積極的に取得時期を提案する職場では、取得率が格段に高まります。
「〇月に取る予定なら、その前に引き継ぎを進めよう」など、業務と育休の両方を前向きに捉える空気が生まれます。

✔️ 管理職への意識づけ・ガイドラインが整っている
「育休を取りたい」と申し出があったとき、上司がどう対応するかで会社の印象は大きく変わります。
管理職向けに対応マニュアルや研修資料を用意している会社では、部下とのコミュニケーションもスムーズです。

✔️ 業務の属人化を防ぐ体制づくり
日常業務が「この人しかできない」という状態では、育休中のフォローが難しくなります。
逆に、業務が見える化され、誰でもアクセスできる状態になっていれば、安心して休める環境が整います。

✔️ 取得者の体験談が“見える”仕組みがある
社内報や掲示板などで、育休を実際に取った社員の声を紹介している会社では、取得への心理的ハードルが下がります。
「〇〇さんも育休取っていたんだ」と分かるだけでも、次に続く人にとっては大きな安心材料になります。

小さな会社でもできる「第一歩」

「うちは人数が少ないから」「引き継ぐ人がいないから」
そう思ってしまうのも当然です。
けれど、今からでもできる小さな工夫で、“取得しやすさ”はぐっと上がります。

「育休中のフォロー体制」をあらかじめ共有しておく
社員が育休を申し出る前から、会社として「どのように業務をカバーするか」を想定しておくことは大きな安心につながります。
たとえば、
・引き継ぎ先をあらかじめ想定しておく
・業務マニュアルをクラウドで共有
・パート社員や外注先との連携体制を整える
といった準備があることで、「育休を取ると周囲に迷惑がかかるのでは…」という不安を軽減できます。
「育休はチームで支えるもの」というメッセージを発信しておくことが、職場にとって大きな意味を持ちます。

手続きの流れをマニュアル化
「誰が、いつ、どんな書類を出すのか」
手続きの流れを簡単な1枚の資料にまとめておくと、会社も社員も迷わずに準備ができます。

就業規則の確認・整備
意外と多いのが、就業規則に育児休業の記載がない、または古い内容のままになっているケースです。
最新の法改正に合わせて、就業規則や育児・介護休業規程を見直すことも大切です。

まとめ:「誰かが先に取る」ことが文化になる

男性育休は、制度があるからといって自然に広がるわけではありません。
誰かが先に取り、職場の中で「当たり前」になっていくことで、ようやく根付いていきます。

そしてそれは、社員の安心や会社への信頼にもつながります。
小さな一歩でも、「取得しやすい空気」をつくることが、今後の人材定着や採用力強化にもつながっていくのです。

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