“働きやすさ”と“働かせやすさ”は両立できるのか?

~経営者と労働者の立場の間で考えるバランス感覚の話~

こんにちは! 横山社会保険労務士事務所の横山勝です。

皆さんは「働きやすい職場」と聞いて、どんな場所を思い浮かべますか?

残業が少ない、お給料が良い、人間関係が良好、自分の意見が言いやすい…

人それぞれ、色々なイメージがあるのではないでしょうか。

一方で、会社を経営する立場の方であれば、「社員に気持ちよく働いてもらいたい」という思いの裏で、「いかに効率よく、会社として成果を出してもらうか」という視点も常に頭の片隅にあるはずです。

これが、今回お話ししたい「働きやすさ」と「働かせやすさ」という、一見すると対立するように見える二つのテーマです。

会社で働く皆さん、そして会社を経営する皆さんにとって、この二つは本当に両立できるものなのでしょうか?

「働きやすい!」って、どんなこと?

まずは、働く側から見た「働きやすさ」について考えてみましょう。

「働きやすい」と感じる理由は、本当に人それぞれです。

例えば、小さなお子さんがいる方なら「急な病気でも休める」「時短勤務ができる」といった制度が助かるかもしれません。
若手の方なら「新しい仕事にどんどん挑戦できる」「スキルアップの機会が多い」という環境に魅力を感じるでしょう。

もちろん、お給料や福利厚生も大切な要素です。
「頑張りが正当に評価される」と感じられれば、モチベーションも上がりますよね。
職場の人間関係がギスギスしていないことも、快適に働く上で欠かせません。

働く人が「働きやすい!」と感じる職場は、結果として「この会社のために頑張りたい」という気持ちを生み出します。

活き活きと働く社員が増えれば、会社の雰囲気は良くなり、生産性も自然と上がっていくものです。

離職する人も減るので、せっかく育てた人材が他社へ流れてしまう心配も減ります。

会社として「働かせやすい」とは?

次に、会社を経営する立場から見た「働かせやすさ」について考えてみましょう。

経営者の方にとって「働かせやすい」というのは、感情論だけではありません。
限られた人材や時間、コストの中で、いかに会社の目標を達成するか、という視点が常にあります。

例えば、業務がきちんとマニュアル化されていて、誰がやっても同じ品質の成果が出せる。
あるいは、急なプロジェクトでも柔軟に人員を配置できる。
残業が多くなりすぎず、人件費も適切に管理できる。
これらは、会社がスムーズに運営される上で非常に重要な要素です。

社員の皆さんが「働きやすい」と感じることはもちろん大切ですが、それだけを追求すると、会社のコストが増えすぎたり、業務の効率が落ちてしまったりする可能性もゼロではありません。

会社として利益を出せなければ、社員の皆さんに高いお給料を払い続けることも難しくなってしまいますよね。

“いいとこ取り”はできる?両立へのヒント

では、「働きやすさ」と「働かせやすさ」は、本当に両立できないのでしょうか?

私は、「できます!」と断言したいです。大切なのは、その「バランス感覚」なのです。

どちらか一方だけを追求するのではなく、両方を同時に考えていく視点が、これからの会社には求められています。

例えば、

柔軟な働き方制度の導入

リモートワークやフレックスタイム制、時短勤務などは、社員にとっては通勤の負担が減り、プライベートの時間を確保しやすくなる「働きやすさ」につながります。
会社にとっては、オフィス維持費の削減や、遠隔地の人材も採用できるという「働かせやすさ」のメリットも生まれます。

IT化・デジタル化の推進

手作業で行っていた業務をシステムに任せることで、社員の皆さんの負担が減り、残業も減るでしょう。
これはまさに「働きやすさ」。
同時に、会社としては業務が効率化され、人件費の無駄も減るため「働かせやすさ」にも直結します。

公正な評価制度とキャリアパスの提示

社員が自分の頑張りや成果を正当に評価され、将来のキャリアが見えることは、大きな「働きやすさ」につながります。
会社側も、評価基準を明確にすることで、社員の目標達成への意欲を高め、人材育成を効率的に進められるという「働かせやすさ」を得られます。

従業員の健康維持への投資

健康診断の費用補助や、休憩スペースの整備、メンタルヘルス相談窓口の設置などは、社員が安心して働ける「働きやすさ」の基盤です。
社員が健康でいられれば、病欠が減り、集中力も高まるため、結果的に会社の生産性向上に繋がり「働かせやすさ」に貢献します。

社内コミュニケーションの活性化

定期的に上司と部下が面談する機会を設けたり、社員同士が気軽に話せる場を作ったりすることは、社員の不満を解消し、モチベーションを高める「働きやすさ」になります。
同時に、会社としては、社員の意見を吸い上げやすくなり、業務改善のヒントを得たり、トラブルを未然に防いだりする「働かせやすさ」につながります。

まとめ:対話から生まれる、より良い未来

「働きやすさ」と「働かせやすさ」は、どちらか一方が良ければもう一方が犠牲になる、という関係ではありません。
むしろ、互いに良い影響を与え合う関係を築くことが、これからの会社には不可欠です。

会社が持続的に成長するためには、社員の皆さんが「この会社で長く働きたい」と感じ、
会社側も「この社員と長く一緒に働きたい」と感じる関係を築くことが重要です。

そのためには、経営者と働く人が、それぞれの立場を理解し、「どうすればもっと良くなるか?」という視点を持って、積極的に話し合うことが大切です。

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