社会保険の「算定基礎届」とは?〜年に一度の定期業務の流れと注意点を簡単に〜

会社の給与計算や社会保険業務を担当されている方にとって、算定基礎届(算定) は毎年訪れる大切な業務ですね。

この記事では、算定基礎届の基本的なことから、提出の流れ、そして注意点までを分かりやすく解説します。

算定基礎届ってそもそも何?

算定基礎届は、毎年1回、原則として7月1日現在の被保険者(従業員)の標準報酬月額を決定するために、会社が日本年金機構(または健康保険組合)に提出する書類です。

この標準報酬月額は、健康保険や厚生年金保険の保険料額や、将来受け取る年金額を計算する際の基礎となります。

簡単に言うと、「あなたの会社の従業員が受け取っている報酬の平均額を国に報告し、それに基づいて社会保険料の基準となる金額を定める手続き」 です。
この報告に基づいて、社会保険料が決まるので、とても重要な書類なんです。

算定基礎届提出の流れ

毎年7月1日から提出が始まる算定基礎届ですが、大まかな流れは以下のようになります。

1.対象者の確認と準備

提出対象となるのは、原則として7月1日時点で在籍している全ての被保険者です。

4月、5月、6月に支払われた給与(報酬)の総額を確認し、集計します。通勤手当や残業代なども含まれます。

2.算定基礎届の作成

日本年金機構から送付される書類、または電子申請を利用して作成します。

4月、5月、6月の報酬月額を記入し、平均額を算出します。

3.提出

管轄の年金事務所または健康保険組合へ提出します。

提出方法は、郵送、窓口持参、電子申請があります。電子申請が最もスムーズでおすすめです。

ここに注意!算定基礎届のポイント

算定基礎届の作成・提出にあたっては、いくつか特に注意しておきたいポイントがあります。

提出期限を厳守する

算定基礎届の提出期限は、原則として毎年7月10日です。

この期限を過ぎてしまうと、会社に日本年金機構から督促が行われたり、場合によっては正しい標準報酬月額が決定されず、従業員の保険料や将来の年金額にも影響が出たりする可能性があります。

余裕をもって書類の準備・作成を進め、提出期限に間に合うよう計画的に業務を行いましょう。
特に従業員数の多い会社では、集計に時間がかかるため、早めの着手をおすすめします。

対象期間(4月、5月、6月)の報酬に変動はないか綿密に確認する

算定基礎届は、毎年7月1日時点の被保険者の標準報酬月額を決定するために、4月、5月、6月の3ヶ月間に支払われた報酬の平均額を基に計算されます。

この期間中に、以下のような給与の大きな変動があった従業員がいる場合は、単に算定基礎届を提出するだけでは適切ではありません。

固定的賃金の変動(昇給、降給、役職手当の新設・廃止など)があった場合

このような変動があり、その後の報酬に大きな変化があった場合は、「月額変更届(随時改定)」の提出が必要になる可能性があります。

算定基礎届とは別に、変動後の3ヶ月間の報酬を基に標準報酬月額の見直しが行われます。

非固定的賃金(残業代など)が一時的に高額になった場合

例えば、一時的な繁忙期で残業代が著しく増加し、たまたま4月、5月、6月が突出して高額になったような場合でも、原則としてその3ヶ月の報酬が算定の基礎となります。

しかし、あまりにも実態とかけ離れる場合は、特例的な取り扱いが認められるケースもありますので、年金事務所に確認することをおすすめします。

従業員の給与明細や賃金台帳を細かく確認し、個々の状況に応じて適切な対応を取りましょう。

報酬の範囲を正しく理解し、漏れなく計上する

社会保険における「報酬」とは、基本給だけを指すものではありません。
労働の対価として会社から従業員に支払われる全ての現金・現物給与が含まれます。具体的には、以下のものが報酬に該当します。

基本給

各種手当 : 役職手当、職務手当、住宅手当、家族手当、通勤手当(非課税分も含む)、皆勤手当、精勤手当、時間外勤務手当(残業代)、休日出勤手当、深夜勤務手当など。

その他 : 賞与(年4回以上支給されるもの)、現物給与(食事補助、社宅家賃補助など、会社の規程や実態に基づいて金銭に換算されるもの)

一時的な支給や慶弔金などは報酬に含まれませんが、判断に迷う場合は必ず年金事務所や専門家(社会保険労務士など)に確認し、正確に計上することが重要です。
報酬の計上漏れや誤りがあると、保険料の過不足や将来の年金額に影響が出るため、慎重な確認が必要です。

電子申請を積極的に活用する

現在、日本年金機構は電子申請の利用を推奨しています。
電子申請を利用することで、以下のようなメリットがあります。

  • 利便性の向上 : 窓口に出向いたり郵送したりする手間が省け、オフィスから手軽に申請できます。
  • 記入ミスの削減 : 入力支援機能やエラーチェック機能があるため、記入漏れや計算ミスを防ぎやすくなります。
  • 処理の迅速化 : 書類での提出に比べて、処理がスムーズに進む傾向があります。
    GビズIDの取得など、初期設定は必要ですが、一度環境を整えてしまえば、以後の手続きが大幅に効率化されます。
    まだ電子申請を導入していない場合は、この機会に活用を検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

算定基礎届は、年に一度の重要な社会保険手続きです。
正確な報酬月額を届け出ることで、従業員の社会保険料や将来の年金額が適正に計算されます。

ご不明な点があれば、管轄の年金事務所や社会保険労務士にご相談いただくことをお勧めします。

この情報が、貴社の算定基礎届業務の一助となれば幸いです。

ご相談は下記の【お問い合わせフォーム】からご連絡ください。

お問い合わせフォームはこちら