「まさか…うちの会社が?」社員の休職・復職、その時どうする?~トラブルなく進める就業規則のツボ~

「うちの会社、病気で長期休む人なんていないよな…」
「休職とか復職とか、複雑そうでよく分からないし…」

もしかしたら、そう思っていませんか?

でも、残念ながら、病気やケガ、そして近年ものすごく増えている「心の不調(メンタルヘルス不調)」は、いつ誰の身に降りかかるかわからないんです。

私もこれまで多くの会社を見てきましたが、どんな会社でも、いつかはこの問題に直面する可能性があります。

もし、社員さんが長期で会社を休むことになった時、あなたは経営者としてどう対応しますか?

社員さんのことを心配するのは当然です。
でも、会社の運営、他の社員さんのこと、そして事業全体を守っていくことも、経営者としての大切な役目ですよね。

そんな「もしもの時」に、会社と社員さん、みんなが困らないようにするための「道しるべ」。

それが、皆さんの会社の就業規則にしっかり書いておくべき「休職・復職のルール」なんです。

「ルールって聞くと、なんか難しそう…」
いえいえ、そんなことはありません。

このルールは、あなたの会社を、そして社員さんを、リスクから守るための「お守り」のようなものなんです。

今回は、皆さんに、この大切なお守りをどうやって作っていくか、そして特にこれだけは知っておいてほしい!というポイントを、分かりやすくお話ししたいと思います。

なぜ「休職・復職のルール」が、あなたの会社にとって必要不可欠なのか?

「別にルールがなくても、その都度話し合えばいいんじゃない?」

そう考える方もいるかもしれませんね。
でも、ルールがはっきりしないと、こんな困ったことが起きてしまうんです。

「え、うちの会社ってどうなの?」社員さんが不安になる

社員さんが病気でつらい時、「お給料は?」「いつまで休めるの?」「戻ってこられるのかな?」と、不安だらけになってしまいます。
これでは、病気を治すことに集中できませんよね。

「話が違う!」揉め事の元になる

「あの時はこう言ったのに…」と、後になって社員さんとの間で「言った言わない」のトラブルになりかねません。
最悪の場合、裁判に発展して、会社にとって大きな負担(時間もお金も)になることもあります。

「なんであの人だけ?」社員さん同士の不満がたまる

ルールがないと、人によって対応が変わってしまうかもしれません。
そうなると、「なんであの人だけ特別扱いなの?」と、他の社員さんから不満が出て、会社の雰囲気が悪くなってしまいます。

どうでしょう?
これでは、会社を安定して続けていくのが難しくなりますよね。

だから、はっきりとしたルールを作っておくことは、

  • 社員さんに安心感を与える → 病気の回復に集中してもらい、早く戻ってきてもらいやすくなる。
  • 会社がトラブルに巻き込まれないようにする → 余計な時間やお金を使わずに済む。
  • みんなに公平に対応できる → 会社の信頼が高まり、社員さんのやる気もアップする。

という、たくさんの良い効果があるんです。
まさに、会社の「保険」のようなものだと思ってください。

休職ルール:会社を守るための「線引き」をハッキリさせよう!

まずは、社員さんが「一時的に仕事をお休みする」休職のルールです。

ここで一番大事なのは、「ここまでならOK、ここからは休職ね」という線を、会社としてハッキリ決めておくことです。

「どんな時に休職になるの?」と「誰が休めるの?」

例えば、「病気やケガで、続けて〇日以上会社を休んだら休職になるよ」とか、「医者から『仕事できない』って診断書が出たら、休職してもらうよ」といったように、誰にでもわかる基準を決めましょう。

特に、心の病気(メンタルヘルス不調)の場合は、見た目では分かりにくいので、「お医者さんが『仕事をするのが難しい』と判断した場合」という表現も大切です。

「入社したばかりの研修期間中の社員は、まだ休職できないよ」といった、休職できる社員さんの範囲も決めておくと良いでしょう。

「いつから、いつまで休めるの?」期間と始まりの日を明確に

休職できる「期間の長さ」を決めておきます。

「勤続年数が〇年以上の人は、最大〇か月休める」というように、社員さんの勤続年数によって期間を変える会社も多いですね。

そして、「いつから休職期間が始まるのか?」という「始まりの日(起算日)」もハッキリさせましょう。

「欠勤が続いた初日から」とか「医者の診断書が出て、会社が休職を認めた日から」など、具体的に決めておけば、後で「いつから数えるの?」という疑問が出なくなります。

「有給休暇を先に全部使ってから休職に入るの?」といった、お休みに関する細かい取り決めも書いておくと、社員さんが迷いません。

「お給料は?社会保険はどうなるの?」お金のことは特に丁寧に!

休職中のお給料は、「基本的にはお支払いしません(無給)」としている会社がほとんどです。
もし、会社として一部でもお給料を出す制度があれば、そのこともきちんと書きましょう。

それから、健康保険や厚生年金保険などの社会保険料は、休職中でもかかり続けます
社員さんが払う分をどうするかを具体的に決めておきましょう。

社員さんが払う分は、会社が一時的に立て替えて、社員さんが会社に戻ってきてから返す、というやり方が一般的です。
お金のことは特にデリケートなので、誤解がないように細かく説明しておきましょう。

「もし、期限までに会社に戻れなかったら…?」休職期間が終わる時の対応

ここが、経営者として一番しっかり決めておくべきポイントかもしれません。

決めた休職期間が終わっても、残念ながら社員さんが仕事に戻ってこられない場合がありますよね。
そんな時にどうするか?

就業規則には、「休職期間が終わる日までに、病気やケガが治らず、仕事に戻れない場合は、その日をもって会社を辞めることになります(自然退職)」というルールを書いておくのが一般的です。

このルールがないと、「まだ休めるはずだ!」と揉めたり、会社がいつまでも休職中の社員さんを抱え続けることになったりしてしまいます。

あらかじめ「ここまでだよ」という線を引いておくことで、会社も社員さんも、お互いにとって公平で、次のステップに進むための道筋を示すことができるんです。

「休んでいる間も、連絡は必要?」定期的な報告のお願い

休職中の社員さんには、定期的に「今の病状はこうです?」という報告や、お医者さんの診断書を出してもらうようにルールで決めておきましょう。

これは、会社が社員さんの状況を把握して、スムーズに仕事に戻ってきてもらうための準備を進めるために、とても大事な情報源になります。

こまめに連絡を取ることで、社員さんも「会社に見守られている」と感じて安心できるはずです。

復職ルール:会社と社員、みんなが安心できる「再スタート」の準備!

無事、休職期間を終えて「さあ、会社に戻ろう!」となっても、いきなり以前と同じようにバリバリ働くのは難しいこともあります。

特に、心の病気(メンタルヘルス不調)から戻る場合は、焦らず、少しずつ慣れてもらうことがとても大切です。

「会社に戻りたい!」と伝えてもらう方法と必要なもの

社員さんが「仕事に戻りたい」と思った時の伝え方(「〇か月前までに、書類で会社に連絡してください」など)と、出してもらう書類(主治医の診断書はもちろん、具体的な仕事ができるかどうかが書かれたものなど)をハッキリ決めておきましょう。

そうすれば、会社も必要な情報を漏れなく受け取れます。

「本当に大丈夫?」会社が最終的に判断する重要性

ここが、経営者の皆さんに特に強調したいポイントです。
お医者さんが「仕事に戻って大丈夫ですよ」と言っても、それが「会社のいつもの仕事が問題なくこなせる状態」とは限らないんです。

だから、就業規則には、「会社の仕事が、いつも通りできるくらい健康になっていること」という、もっと具体的な判断基準を盛り込みましょう。

そして、会社が指定するお医者さん(会社の産業医など)との面談や健康診断を必ず行ってもらい、その結果や、本人との話し合いを通して、会社が最終的に「仕事に戻れるかどうか」を判断するという流れを明確に決めましょう。

このプロセスを踏むことで、社員さんが無理なく仕事に戻れるか、またすぐに休んでしまうことがないかなど、会社としてのリスクを減らし、安定した復帰をサポートできます。

「慣らし運転」も大切!「試し出勤制度」で成功率アップ!

特に心の病気から復職する場合、いきなり元のペースで働くのは大きな負担になることがあります。

そこで、ぜひ考えてほしいのが「試し出勤制度」というものです。

これは、本格的に会社に戻る前に、週に数回だけ短時間出勤したり、簡単な仕事から始めたりして、少しずつ仕事に慣れてもらう制度です。

この制度があれば、社員さんは焦らず自分のペースで回復しながら仕事に慣れることができ、会社も社員さんの様子をじっくり見極められます。

結果として、スムーズに会社に戻ってもらえ、再び休んでしまうことを防ぐことにも繋がります。

この制度を取り入れる場合は、期間やその間のお給料はどうなるかなども細かく決めておきましょう。

「元の部署には戻れない?」部署異動や仕事内容変更の可能性

場合によっては、元の部署や仕事内容では、体調的にまだ難しいというケースもあります。

そんな時に、部署を異動したり、仕事内容を変えたりする可能性について、就業規則に触れておくと良いでしょう。

ただし、会社には必ずしも異動させる義務があるわけではないので、その点は誤解のないように書いておくことが大切です。

最後に:私が「休職・復職のルール」を強くお勧めする理由

ここまで、休職・復職のルールの重要性とそのポイントをお話してきました。

もしかしたら、「うちはまだ大丈夫」と思っている経営者の方もいるかもしれません。
でも、私はこの仕事を長くやってきて、本当に多くのケースを見てきました。

ルールが曖昧だったために、

  • 社員さんとの間で深刻なトラブルに発展し、会社が何百万円もの損失を被ったケース
  • 休職中の社員さんの対応に追われ、他の社員さんの負担が限界を超えてしまったケース
  • 大切な社員さんが、適切な復帰支援を受けられず、会社を辞めてしまったケース

…残念ながら、こういう例をいくつも見てきました。

だからこそ、皆さんには、「もしも」の時に会社と社員さんを守る、この「お守り」をしっかりと準備してほしいと心から願っています。

就業規則の整備は、決して難しいことではありません。
むしろ、会社の未来を守るための、最高の投資だと思っています。

「どこから手をつけていいか分からない」
「うちの会社に合ったルールってどう作ればいいの?」

もし、そんな風に感じたなら、一人で悩まず、ぜひ私たち社会保険労務士のような専門家を頼ってください。

皆さんの会社が、どんなことがあっても安心して経営を続けられ、社員さんも笑顔で働ける、そんな「強く、優しい会社」であり続けるために、私たちが全力でサポートします!



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