「育休」はコストではない!有能な社員が戻ってくるための「復帰プラン」の作り方

経営者にとって、人材は最大の経営資源です。

採用にかかるコスト、教育や研修に費やす時間、現場で培われた経験…。
これらすべてを考えると、会社にとって有能な社員は単なる“働き手”ではなく、将来の戦略を担う資産そのものです。

ところが、社員が育児休業に入ると、多くの経営者はつい「戦力ダウン」「人件費の増加」「現場の負担」という短期的なコストばかりに目が行きがちです。

しかし、この見方こそが、長期的に最も大きな損失を生む原因になりかねません。

本当にリスクなのは「育休そのもの」ではなく、 育休から戻る社員をどう受け入れるかの仕組みがないこと です。

復帰プランを戦略的に作ることで、社員は安心して戻り、会社は人材を失わず、組織全体の安定性を高めることができます。

育休は一時的な支出ではなく、 未来への投資 なのです。

1.育休中の「つながり」を切らさない

育児休業中の社員は、物理的にも心理的にも会社から距離ができやすくなります。

「自分は会社に必要とされているのだろうか」「戻ってもやっていけるのだろうか」という不安は、復帰の意欲を大きく左右します。

ここで重要なのは、経営者として 社員とのつながりを意識的に維持すること です。

例えば、以下のような取り組みが効果的です。

  • 月1回のオンライン面談
    雑談でも構いません。「元気ですか?」「家庭は落ち着きましたか?」など、仕事以外の話題でも十分です。ここでの目的は「会社との心理的距離を縮めること」です。
  • 社内ニュースや業績報告の共有
    「会社がどう動いているか」を知ることは、社員の帰属意識を保つうえで非常に大切です。特に組織変更や新プロジェクトの情報は、復帰後にスムーズに業務に入る助けになります。
  • 社内イベントへの招待や参加機会の提供
    難しく考える必要はありません。ランチ会や小規模ミーティングにオンライン参加できる形でもOKです。
    ここでのポイントは、社員が「会社から必要とされている」と感じられることです。

こうした小さな工夫は、短期的なコストに比べると非常に低リスクです。
復帰後の離職防止や早期戦力化につながる 最大の投資 と言えるでしょう。

2.復帰後の「助走期間」を設ける

復帰直後は、家庭の事情や子どもの体調変化で予定通りに働けない場面がどうしても出てきます。

ここで「フル稼働できないなら復帰は難しい」と突き放すのは、企業にとって大きな損失です。

経営者視点で重要なのは、 社員が長期的に戦力として戻るための“助走期間”を用意すること です。

具体的な取り組み例は以下の通りです。

  • 時短勤務やフレックスタイムの導入
    「復帰直後は1日6時間勤務、徐々にフルタイムに戻す」など、柔軟な働き方を制度化しておくことで、復帰後の心理的ハードルを下げられます。
  • 在宅勤務の活用
    特に小さな子どもがいる場合、在宅勤務は欠勤リスクを減らすだけでなく、集中して業務に取り組める時間を確保できます。
  • チーム内での業務シェア体制
    「全てを1人に任せない」体制を作ることで、復帰社員もプレッシャーなく仕事に慣れていけます。

こうした助走期間は一見“甘やかし”に見えるかもしれませんが、 復帰スピードを早め、離職を防ぎ、最終的にフル戦力化するための戦略的な投資 です。

経営者が制度設計に関わることで、復帰後のパフォーマンス最大化につながります。

3.企業にとってのリターン

復帰プランを整えることは、社員への配慮だけでなく、企業の 経営戦略 として明確なリターンがあります。

  • 離職率の低下
    育休明けに辞める社員を減らすことで、採用・教育コストを大幅に削減できます。
    特に優秀な人材を失うことは、単なるコスト以上の損失です。
  • 社員の定着率向上
    「会社は社員のライフイベントに理解がある」と実感できる職場は、復帰社員だけでなくチーム全体の満足度向上にもつながります。
    組織の安定性が増すことで、新規事業やプロジェクトの推進力も高まります。
  • ブランド価値の向上
    求職者の意識は変化しています。「働きやすさ」「社員を大切にする会社」という条件を重視する人材は増加中です。
    復帰支援制度を整えている企業は、採用活動でも優位に立てます。

実際に、復帰支援を充実させた中小企業では「離職率が半減」「求人応募者数が倍増」という事例もあります。
これは単なる福利厚生ではなく、 経営資源を最大化する戦略的施策 なのです。

🔷まとめ

育休を「負担」と見るか、「投資」と見るか。
その視点の違いが、会社の未来を分けます。

有能な社員を採用し、育て、戦力化してきた過程を思い出してください。
その人材を育休明けに失うリスクは、採用・育成コスト以上の大きな損失です。

復帰プランは、豪華な制度ではなくても構いません。
小さな工夫でも、社員が安心して戻れる環境を整えられることが重要です。

経営者として、育休を戦略的に捉え、 未来の戦力を呼び戻す投資 として取り組むことこそ、企業の成長を支える最善策です。

育休はコストではありません。

それは、 人材を確実に戦力化し、会社の競争力を高めるための戦略的投資 なのです。

🔷社労士としてのひとこと

👔 経営者として、今できる最も賢い一手は「復帰プランを用意すること」です。

社員が安心して戻り、力を発揮できる環境をつくることは、会社の未来そのものを守ることにつながります。

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