“賃金台帳”ってどこまで書けばいいの?

「賃金台帳ってどこまで書けばいいの?」という質問を受けることがあります。

実際、Excelで管理している会社も多く、「給与明細を保存しているから大丈夫」と思っているケースも少なくありません。

でも、労働基準法上の“賃金台帳”は、実は明確な記載項目が定められており、単なる給与明細とは別物なんです。

🔷賃金台帳に「必ず」記載すべき項目

労働基準法第108条および労働基準法施行規則第54条では、次の事項を賃金台帳に記載しなければならないと定めています。

  1. 労働者の氏名
  2. 性別
  3. 賃金計算期間
  4. 労働日数
  5. 労働時間数
  6. 時間外・休日労働・深夜労働の時間数
  7. 基本給、手当などの種類とその金額
  8. 控除項目の種類とその金額

これらを見て「うちは給与明細で全部出してるからOK」と思われるかもしれません。

ですが、給与明細の形式が労基法上の“台帳様式”を満たしているかは別の話です。

特に、時間外や休日労働の時間数が抜けているケースが多く、監督署からの指摘ポイントになることもあります。

🔷Excel管理はOK? 電子保存は?

賃金台帳は紙で作る必要はなく、Excelなど電子データでの作成・保存も認められています。

ただし、条件があります。

労働基準法上の帳簿書類(労働者名簿・出勤簿・賃金台帳)は、以下のルールを満たす必要があります。

  • いつでも出力できる状態で保存されていること
  • 改ざん・削除の防止措置がとられていること
  • 保存期間(退職後3年間)を満たすこと

つまり、Excelで管理する場合は「ファイルを共有サーバーやクラウド上で安全に保存し、過去の修正履歴を残す」などの対応が必要です。

特に複数人が編集できる環境では、“誰がいつ修正したか”がわかる状態を意識しておくことがポイントです。

🔷実務上のよくある落とし穴

(1)時間数の記録がざっくり

→ 「月の総労働時間」しか書いていないケースがありますが、時間外・休日・深夜ごとに区分する必要があります。

(2)通勤手当や住宅手当をまとめて「手当」と記載

→ 「手当の種類」を明示する必要があります。種類ごとの金額を明記しましょう。

(3)控除欄に「社会保険料」だけ

→ 健康保険・厚生年金・雇用保険など、控除の種類ごとに分けて記載が必要です。

(4)保存データの所在があいまい

→ パソコンの中だけ、USBだけ、というのはNG。第三者が確認できるように保管ルールを整備しましょう。

🔷Excelで作る場合のおすすめ構成

  • A列:氏名
  • B列:性別
  • C列:賃金計算期間
  • D列:労働日数
  • E列:所定労働時間
  • F列:時間外労働時間
  • G列:休日労働時間
  • H列:深夜労働時間
  • I列以降:各種手当・控除項目

これに加えて「合計欄」「差引支給額」まで整理しておくと、給与明細との整合性も取りやすくなります。

🔷「形式よりも中身」が大事

監督署の調査では、形式そのものよりも実態と整合しているかが重要視されます。

出勤簿の時間と賃金台帳の時間が一致しているか、支給額が合っているか。

この“整合性チェック”がスムーズにできるようにしておくと、トラブル防止にもつながります。

🔷最後に:まずは「一度見直す」ところから

賃金台帳は、会社が社員の労働条件を正しく管理できているかを示す“土台”の記録です。
一度整えておけば、その後の労務管理や調査対応がぐっと楽になります。

「うちはExcelでやってるけど大丈夫かな?」
「給与ソフトの出力で足りてるのか不安…」

そんなときは、一度チェックしてみませんか?

横山社会保険労務士事務所では、現行の賃金台帳の確認や、Excelひな形の整備、電子保存のルールづくりまでサポートしています。
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