完全月給制と日給月給制、その決定的な違いとは?

「休んだら減る」の裏側にある、賃金構造の本質を整理する

求人票や雇用契約書で目にする「月給」という言葉。

実は、労働法や実務の世界では、大きく分けて「完全月給制」「日給月給制」の2種類に分類されます。

「欠勤したら給料が減るかどうか」という表面的な違いだけでなく、その根底にある「何を基準に給与を支払うのか」という設計思想の違いを深掘りして解説します。


①根本的な考え方の違い:期間か、日労働か

賃金制度を理解するカギは、「報酬の単位をどこに置いているか」にあります。

【完全月給制】=「期間」に対する報酬

完全月給制は、1ヶ月という「期間」に対してあらかじめ賃金が固定されている制度です。

  • 計算の基準: 出勤日数に関わらず、月額が固定されています。
  • 欠勤時の扱い: たとえ病気で数日休んだり、遅刻・早退が発生したりしても、原則として給与額を減額(欠勤控除)しません。
  • 背景: 「時間で縛るのではなく、そのポジションや役割を果たしていること」に対して支払われます。そのため、経営層や管理職、高度な専門職に適用されるのが一般的です。

【日給月給制】=「月額固定 + 労働義務」の報酬

日本で最も普及している形態です。
「月額25万円」と決まっていても、それは「所定の労働日をすべて勤務すること」が前提となっています。

  • 計算の基準: 月単位で額面は決まっていますが、欠勤があればその分を差し引きます。
  • 欠勤時の扱い: 働かなかった日数や時間分を、計算式に基づいて月給からマイナス(欠勤控除)します。
  • 背景: 「ノーワーク・ノーペイ(働いていない分は払わない)」という原則に基づいた、公平性を重視する設計です。

②「月給制」と「日給制」の決定的な違い

よく混同されるのが、「日給月給制」と、単なる「日給制」です。
ここには「休日の扱い」という大きな差があります。

  • 日給月給制の場合: 月給の中に「土日祝日などの所定休日分」の賃金も含まれていると考えます。そのため、祝日が多い月であっても、欠勤さえしなければ毎月の支給額は変動しません。
  • 日給制(および時給制)の場合: 働いた日数分を「積み上げる」方式です。祝日が多い月は出勤日数が減るため、月間の総支給額が大きく下がることになります。

つまり、日給月給制は「月としての安定性」を持ちつつ、「欠勤へのペナルティ」を備えたハイブリッドな制度と言えます。

③実務上の注意点:残業代と控除計算

制度を導入・運用する際には、以下の2点に注意が必要です。

1)残業代の計算はどちらも必要

「完全月給制だから残業代を払わなくていい」というのは誤解です。

管理監督者(役職者など)を除き、完全月給制であっても法定労働時間を超えて働けば、残業代(割増賃金)の支払義務が生じます。

2)欠勤控除の計算式を明確にする

日給月給制を採用する場合、欠勤1日あたりいくら引くのかを就業規則に明記しなければなりません。

(例)基本給 ÷ 1ヶ月の平均所定労働日数 = 1日あたりの欠勤控除額
この計算式が曖昧だと、いざ欠勤が発生した際に「引きすぎだ」「計算が合わない」といった労使トラブルの火種になります。

🔷まとめ:制度の選択は「会社からのメッセージ」

「完全月給制」と「日給月給制」。

どちらが優れているかという問題ではなく、「自社が従業員にどのような価値提供を求め、どう報いるか」という姿勢の表れです。

  • 完全月給制を選択する場合 :勤怠の細かな増減よりも、その月ごとの成果や責任の全うを重視する「自律型」の組織に適しています。従業員には高い自己管理能力が求められる一方、会社側は「成果への対価」という側面を強調することになります。
  • 日給月給制を選択する場合 :労働時間と賃金の関係性を明確にし、全従業員に対して「働いた分を適正に支払う」という公平性を担保するのに適しています。製造現場やサービス業など、シフトや労働時間が生産性に直結する職種において、納得感を得やすい制度です。

実務においては、単に「以前からそうだったから」という理由で運用を続けているケースも少なくありません。

しかし、働き方が多様化する現代、就業規則に定める「賃金の定義」と、実際の現場での「支払い実態」が乖離していると、未払い賃金や不当控除といった法的なリスクを招く恐れがあります。

自社の賃金制度が、現在の組織フェーズや求める人材像と合致しているか。

今一度、賃金規程を見直し、労使双方が納得感を持って働ける土壌を整えることが、持続可能な経営への第一歩となります。

ご相談は下記の【お問い合わせフォーム】からご連絡ください。

お問い合わせフォームはこちら