創業者の労務チェックリスト~トラブル回避のために最初にやるべきこと~

起業すると、資金繰りや営業、人材確保に追われて、つい労務管理は後回しにしがちです。

しかし、労務トラブルは放置すると、

  • 「社員が突然辞めてしまう」
  • 「未払い残業代の請求で多額の支払いが発生する」
  • 「労働基準監督署から調査が入り、会社が指導や罰則を受ける」

といった現実的なトラブルとなって、経営に大きなダメージを与えます。

創業期の今だからこそ、労務管理の基本をしっかり固めることが、こうしたトラブルを未然に防ぎ、会社の成長と社員の安心につながるのです。

今回のチェックリストは、創業者の皆さんに「絶対に押さえてほしい」労務の基本ポイントをまとめたもの

まだ社員が少ないから大丈夫、と思わずに、今すぐ着手してください。
正しい労務管理は、会社を守り、長く信頼される存在となるための欠かせない取り組みです。

では、具体的な7つの取り組みをご紹介します。

🔷創業者がまず取り組むべき労務チェックリスト

1. 雇用契約書の作成と労働条件の明示を確実に行う

雇用契約書は、労働時間、給与、休日、業務内容などの労働条件を明確に記載し、会社と社員が合意した証拠となる重要な書面です。

労働基準法では、これら労働条件を雇用開始時に「書面」で明示することが義務付けられています。

口頭の説明だけでは誤解やトラブルの原因になるため、必ず労働契約書や労働条件通知書を作成し、社員に交付して署名をもらいましょう

これにより、双方の認識違いを防ぎ、トラブル回避につながります。

2. 就業規則の作成・整備は早期に着手する

社員が10人未満の小規模事業所でも、就業規則を作成しておくことは大きなメリットがあります。

就業規則は、労働時間、休暇、遅刻・欠勤の扱い、懲戒処分など社内ルールを明文化したもので、これがあることで社員もルールを理解しやすくなります。

不明確なルールは社員間のトラブルや法的トラブルの元となるため、専門家の支援を受けて会社の実態に合ったものを整備しましょう。

3. 労働保険・社会保険の加入手続きを怠らない

雇用保険や労災保険は、従業員を雇用したら必ず加入しなければならない労働保険です。

未加入の場合は、行政から指導や追徴金を受ける可能性があります。

また、社会保険(健康保険・厚生年金保険)も一定規模の事業所で加入が義務付けられているため、条件を確認して速やかに手続きを行いましょう。

加入手続きは専門家に依頼するとスムーズです。

4. 労働時間管理の仕組みづくりで“見える化”を徹底する

社員の出勤・退勤時間、休憩時間は正確に記録し、法定労働時間を超える勤務があれば適正に割増賃金を支払う必要があります。

タイムカードや勤怠管理システムを導入して客観的な記録を残し、長時間労働やサービス残業の疑いをなくしましょう。

さらに、時間外労働を行う場合は、労使間で36協定を締結し、労働基準監督署に届け出ることも忘れてはいけません

5. 賃金の支払いは遅延なく、明確な内訳を示す

給与は労働の対価であり、支払い遅延は労働基準法違反にあたります。

毎月の支払日を定め、遅れずに支払うことは社員との信頼関係構築に不可欠です。

また、給与明細書には基本給や残業代、控除額などの内訳を記載し、必ず社員に交付しましょう。

6. ハラスメント対策の基本方針を早めに策定し、周知する

パワハラやセクハラは職場の雰囲気を悪化させ、会社の信用を失う重大問題です。

社内で「ハラスメントを許さない」という姿勢を明確にし、相談窓口や対応ルールを設けることが必要です。

早期発見・迅速対応がトラブル拡大を防ぎます。

7. 新入社員向けの労務研修や説明会を実施して認識のズレを防ぐ

入社時に労働条件や就業規則の内容、社内のルールをしっかり伝えることで、社員の理解不足によるトラブルを防げます。

質問や不安を解消できる場を設けることも重要です。

🔷まとめ

労務トラブルは、発生してからでは解決に多大な時間とコストがかかります。
今回挙げた7つのポイントは、創業期の今だからこそ整えておくべき基本中の基本です。

  • 契約書と労働条件の明示で認識のズレを防ぐ
  • 就業規則の整備でルールを統一する
  • 保険加入で義務を果たし安心を確保する
  • 労働時間管理で証拠と予防策を用意する
  • 賃金支払いの適正化で信頼を守る
  • ハラスメント対策で安全な職場を保つ
  • 新入社員への説明で不安を払拭する

この7項目は、経営を安定させ、信頼を損なわないための仕組みづくりです。

🔷おわりに

創業期は、営業や資金繰りのような「目に見える成果」に意識が向きがちです。
しかし、労務の仕組みが整っていないと、成長の途中で足を引っ張られる場面が必ず出てきます。

労務管理は、事業を継続的に発展させるための戦略的な準備です。
創業初期に着手すれば、将来の余計な出費や混乱を確実に減らせます。

今日から一つずつ取り組み、早い段階で形にしてしまいましょう。
労務面が整っていれば、経営者はより大きな決断と挑戦に集中できます。
会社の成長は、そうした環境の中でこそ、安心して加速していくのです。

横山社会保険労務士事務所は、安心して事業を伸ばせるよう、法務・実務の両面からしっかりサポートします。
「トラブルを未然に防ぐ会社」こそ、長く生き残る会社です。

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