「社員を雇ったら思ったより手続きが多い!」創業者の驚きと対策

事業を立ち上げ、いざ「これから仲間を増やして会社を大きくしていくぞ!」と意気込んで初めての社員を迎え入れたとき、多くの創業者が直面する意外な現実があります。

それは、「あれ?こんなに手続きって多いの?」という驚きです。

面接を重ね、採用を決定するまでは順調でも、その後に待ち受ける入社手続きの多さに頭を抱える方は少なくありません。

給与計算や日々の業務とはまた別に、社会保険や労働保険の手続き、税務関連の届出など、専門知識が必要な手続きが次々と現れます。

本記事では、多くの創業者が「大変だった!」と感じる主な手続きを整理し、それぞれの対策を解説していきます。

1.雇用契約書・労働条件通知書

「この人に働いてもらうぞ!」と決まったら、まず最初に行うべきは雇用契約です。

法律上、労働基準法で定められた項目を明示した労働条件通知書を交付することが義務付けられています。

書面での交付が原則ですが、従業員の同意があればメールやSNSでの通知も可能です。


創業者がつまずきやすい具体例
・テンプレートをダウンロードして使ったけど、うちの会社特有のルール(例えば、インセンティブの支給条件やフレックスタイム制の運用方法など)をどう書けばいいか分からず、結局あいまいなままになってしまった

・口頭で『給料は月30万円ね』と伝えていたけど、手当や残業代の計算方法を明記していなかったため、入社後に『話が違う』とトラブルになった


対策
厚生労働省のウェブサイトに公開されているテンプレートはあくまでベースです。
自社の業務内容や賃金体系に合わせてカスタマイズする必要があります。

賃金、労働時間、休日、退職に関する事項は特にトラブルになりやすいため、具体的に明記することが重要です。

また、労働条件通知書は会社が一方的に通知するものですが、雇用契約書は労使双方が内容に合意したことを証明する書類です。

後のトラブルを防ぐためにも、雇用契約書も作成し、双方で保管しておきましょう。


「雇用契約書」「労働条件通知書」の違いは、下の記事で確認してください。

「雇用契約書」と「労働条件通知書」って、何が違うの?

先日、顧問先のお客様から「雇用契約書と労働条件通知書って、どう違うんですか?」というご質問をいただきました。 実際に人を雇う場面で、「とりあえず書類を用意したけ…

2.社会保険(健康保険・厚生年金保険)

従業員を雇用した際は、原則として社会保険に加入させる義務があります。

これは事業規模や従業員の労働時間によって加入義務が発生するかが決まります。

手続きが遅れると、従業員の資格証明書発行が遅れたり、遡って保険料を支払う必要が生じたりするため、迅速な対応が求められます。


創業者がつまずきやすい具体例
・入社してから1ヶ月以上経つのに、社員から『まだ資格確認書が届かない』と言われて慌てて手続きをした

・手続きが複雑で、提出書類の不備を何度も指摘され、なかなか完了しない

・給料から天引きする社会保険料の計算方法が分からず、金額を間違えてしまった


対策
社会保険の手続きは管轄の年金事務所で行います。

初めての場合は、年金事務所に電話で問い合わせたり、予約をして窓口で相談に乗ってもらうのが一番確実です。
必要書類の準備や記入方法についても丁寧に教えてもらえます。

また、社会保険料は従業員と会社が半分ずつ負担するため、給与計算時には正確な金額を控除し、会社負担分と合わせて納付する必要があります。
正確な計算のためにも、社会保険料額表を活用しましょう。

3.労働保険(労災保険・雇用保険)

社会保険と同様に、労働保険(労災保険・雇用保険)への加入も必須です。

労災保険は従業員を1人でも雇用すれば、加入義務が発生します。

一方、雇用保険は、1週間の所定労働時間が20時間以上で31日以上雇用される見込みの従業員を雇用した場合等に加入義務が発生します。


創業者がつまずきやすい具体例
・毎月の給与から、雇用保険料を控除するのを忘れていた(あるいは知らなかった)

・パートやアルバイトの雇用保険の加入条件が分からず、加入させるべき人を漏らしてしまった

・年度更新の手続きをうっかり忘れてしまい、追徴金が発生した


対策
労災保険は労働基準監督署、雇用保険はハローワークが手続きの窓口です。
どちらも初めての場合は、窓口で相談しながら進めるのがよいでしょう。

また、労働保険の年度更新手続きは毎年行う必要があります。
特に、従業員の入れ替わりが多い場合は、手続き漏れがないように注意が必要です。

労災保険料は、会社が全額負担なので、従業員の給与からは控除しません。
雇用保険料は、各従業員の毎月の給与から控除します。

4.住民税の手続き

給与から天引きする住民税の手続きも、忘れがちですが重要な業務です。

会社が従業員の住民税を給与から天引きして市区町村に納めることを特別徴収といいます。


創業者がつまずきやすい具体例
・入社時に住民税の特別徴収の切り替え手続きを失念し、従業員が自分で納税する普通徴収と二重払いになってしまった

・従業員の住所変更があったのに手続きを忘れてしまい、間違った市区町村に納付書を送ってしまった

・市区町村から送られてくる住民税の決定通知書の見方が分からず、正しい金額を天引きできない


対策
従業員が前職で特別徴収をしていた場合、前職の市区町村から送られてくる書類を引き継ぎ、新しい勤務先の情報を記載して提出する必要があります。

また、新卒者の場合は普通徴収(自分で納付)から特別徴収への切り替え手続きが必要になることもあります。

各市区町村の役所に問い合わせて、手続き方法を確認しましょう。

🔷まとめ:専門家を頼るという選択肢

ここまで紹介した手続きは、どれも専門知識が必要で、初めての人にとっては大きな負担となります。

しかし、これらの手続きには期限があり、遅延すると罰則の対象となる可能性もあります。

「本業に集中したいのに、手続きに時間を取られすぎる…」
「正直、何から手をつけていいか分からない…」

そう感じたときは、ぜひ専門家を頼ることを検討してみてください。

社会保険労務士は、雇用関連の手続きや労務管理のプロフェッショナルです。

日々の給与計算から入社・退社時の手続き、就業規則の作成まで、幅広くサポートいたします。

創業期は特に、限られた時間をいかに有効活用するかが成功の鍵となります。
プロに任せることで、本業に集中できるだけでなく、法的なリスクも回避できます。

横山社会保険労務士事務所でも、これらの手続きに関するご相談を承っております。

「初めての社員雇用で何から始めたらいいか分からない」
「自社に合った就業規則を作りたい」

そんなお悩みをお持ちの経営者の皆様、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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