2026年4月から変わる「被扶養者の年収確認」

――何が変わって、会社は何に気をつければいい?
「奥さん(子ども)を被扶養者に入れたいんですが、収入の見方ってどうなりますか?」
この質問、ちょくちょく出てきます。
2026年4月からは、その“収入の見方”が少し変わることになりました。
制度自体が大きく変わるわけではありません。
ただ、確認のしかたが変わります。
ここを誤解すると、「聞いてなかった」「そんなつもりじゃなかった」が起きやすいポイントです。
今回は、実務目線で整理してみます。
🔶そもそも「被扶養者の収入」はどうやって判断している?
健康保険の被扶養者は、「今いくら稼いだか」ではなく、これから1年間でどれくらい収入が見込まれるかで判断されます。
基準はおなじみのこちらです。
- 原則:年収130万円未満
- 60歳以上・一定の障害がある方:180万円未満
- 19歳以上23歳未満(配偶者を除く):150万円未満
ここまでは、これまでと変わりません。
変わるのは、“給与収入がある人をどう見るか”です。
🔶【これまで】実際の働き方も含めて「総合的に見る」
これまでは、
- 労働条件通知書の内容
- 実際の勤務状況
- 残業が出そうかどうか
こうしたものを含めて、時間外労働の見込みなども考慮した年収見込みで判断されていました。
そのため、
- 残業が多くなりそう
- シフトが増えそう
といった「実態」が、判断材料になることもありました。
🔶【2026年4月以降】判断の軸は「労働契約」に一本化
2026年4月1日以降は、ここが大きく整理されます。
被扶養者の認定は、原則として「労働契約段階で見込まれる収入」で判断されます。
具体的には、
- 労働条件通知書などに記載された
- 時給
- 所定労働時間
- 労働日数
- そこから計算した1年間の収入見込み
これが基準になります。
ポイントはここです。
👉 労働契約に明確な定めがない残業代などは、原則として含めない
つまり、「結果的に忙しくなって残業が増えたかどうか」ではなく、契約上、最初から見込まれているかどうかを見る、という考え方に変わります。
🔶会社側が実務で対応することは?
給与収入のみの被扶養者を認定する場合、次の対応が必要になります。
- 従業員を通じて
被扶養者の労働条件通知書などを提出してもらう - その方の収入が
「給与収入のみである」ことの申立てをしてもらう - 基本給だけでなく、
各種手当・賞与も含めて年収見込みを確認する
「え、そこまで見るの?」と思われるかもしれませんが、これは会社が勝手に厳しくなったわけではありません。
判断基準が明確になった、という位置づけです。
🔶給与以外の収入がある場合はどうなる?
年金収入や事業収入、不動産収入など、給与以外の収入がある場合は、これまでと同じ取扱いです。
- 収入証明書
- 課税(非課税)証明書
こうした書類をもとに、年間収入を確認します。
今回の変更は、「給与収入のみの人の見方」が整理されたと考えると分かりやすいでしょう。
🔶4月は「被扶養者のトラブル」が起きやすい時期
進学、就職、働き方の変更――
4月は家族の状況が一気に動きます。
そのタイミングで、
- 書類が揃っていない
- 収入区分の確認があいまい
こうした状態だと、被扶養者の認定が遅れたり、やり直しになることもあります。
制度を完璧に理解する必要はありません。
ただ、
「2026年4月からは、労働条件通知書が重要になる」
この一点を押さえておくだけでも、実務はかなり楽になります。
🔶まとめ:今回の変更で意識したいこと
- 被扶養者の収入判断は「将来1年の見込み」
- 2026年4月以降、給与収入のみの場合は、労働契約ベースで判断
- 契約に書いていない残業代などは原則含めない
- 4月前に、手続きの流れを整理しておくのが安心
「これ、うちの場合どうなるんだろう?」
そう思った時点で、早めに確認するのが一番です。
春はバタバタします。
だからこそ、先に整えておくことが、いちばんのリスク対策です。
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