年次有給休暇を「制度」として理解するための前提整理

年次有給休暇は、「社員に休みをあげる制度」と説明されることが多いですが、実務的には少し違います。
有給休暇は、労働日があることを前提に、その労働義務を“消す”制度です。
つまり、有給休暇は、「働かなくていい日を新しく作る」制度ではなく、本来は働くはずだった日を、帳消しにする制度です。
この前提を理解していないと、運用が一気におかしくなります。
🔷有給休暇は「労働日」が確定していないと成立しない
有給休暇は、
・所定労働日
・所定労働時間
が決まっていて、初めて意味を持ちます。
- シフトが曖昧
- 出勤日がその都度変わる
- 「来られる日に来ている」
こうした働き方のまま有給休暇を付与しても、消すべき労働日が存在しないため、制度が成立しません。
実務で「有給休暇の管理ができない会社」は、たいていここが曖昧です。
🔷有給休暇は「賃金制度」と一体で考える制度
有給休暇中の賃金は、
- 通常の賃金
- 平均賃金
- 標準報酬日額
のいずれかで支払います。
この選択は、「どれが得か」ではなく、賃金制度と整合しているかで決まります。
賃金体系が整理されていない会社では、有給休暇の賃金計算が必ず迷子になります。
🔷有給休暇は「与えた瞬間から管理義務が生じる」
付与日数を決めた時点で、
- 何日付与したか
- 何日使ったか
- 残日数はいくつか
を管理する義務が発生します。
「使いたいと言われたら使わせる」という姿勢だけでは、管理義務を果たしていることにはなりません。
🔷有給休暇は「労使の信頼」だけでは回らない
創業期の会社ほど、「信頼関係があるから大丈夫」と考えがちです。
でも有給休暇は、信頼ではなく記録で回す制度です。
- 記録があるから守れる
- 記録があるから説明できる
- 記録があるから揉めない
制度としては、感情を前提にしていません。
🔷まとめ:有給休暇は「使わせる制度」ではなく「成立させる制度」
有給休暇は、社員のための制度であると同時に、会社が労働時間管理と賃金管理をしている証拠でもあります。
横山社会保険労務士事務所では、有給休暇の話をするとき、「何日ありますか?」より先に、
- 労働日・労働時間は確定していますか
- 賃金の計算ルールは整理されていますか
を確認します。
ここが固まっていないと、有給休暇は“制度として存在しない”のと同じだからです。
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