就業規則が「効力」を持つのは、どの時点からか

就業規則を作りました。
労基署にも出しました。
これでひと安心。
――本当にそうでしょうか。
実は、就業規則は「作った瞬間」から効力を持つわけではありません。
制度として効力が生じるには、きちんと押さえておくべきプロセスがあります。
今回は、その「効力が生じるタイミング」を整理します。
① 作成しただけでは効力は生じない
まず大前提として。
会社が就業規則を作成しただけでは、それは「会社内部の案」に過ぎません。
労働基準法第106条では、
就業規則を労働者に周知させなければならない。
が、就業規則の効力の前提とされています。
つまり、
- 作った
- 印刷した
- ファイルに保存した
だけでは足りないのです。
では、順を追って見ていきましょう。
② 意見聴取(労働者代表の意見を聞く)
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成・変更する際に、労働者代表の意見を聴くことが必要です。
ここで誤解されやすいのが、「同意が必要」ではなく、「意見を聴くことが必要」という点です。
たとえ反対意見があっても、意見書を添付して届け出れば手続き上は成立します。
ただし、ここでのプロセスが雑だと、
- 労働者代表の選出が適正でない
- 形式的に署名だけもらった
- 実質的な説明をしていない
といった問題が、後々のトラブルの火種になります。
③ 労基署への届出
意見書を添付して、労働基準監督署へ届出を行います。
これをもって「法的な手続き」は完了します。
しかし――
ここが重要です。
届出をした時点では、まだ“会社の内部的な効力”は確定していません。
届出はあくまで行政手続きです。
労働者との関係で効力が生じるかどうかは、別の話になります。
④ 周知してはじめて効力が生じる
就業規則が労働契約の内容となるためには、「労働者への周知」が必要です。
周知とは、単に存在を知らせることではありません。
例えば、次のような方法が考えられます。
- 事業場の見やすい場所に備え付ける
- 社内イントラネットで常時閲覧可能にする
- 書面を配布する
重要なのは、いつでも確認できる状態にあることです。
金庫にしまってある。
社長のPCの中にだけ保存してある。
「言えば見せるよ」という状態。
これでは周知とは言えません。
🔷では、効力はいつから?
整理すると、就業規則が効力を持つのは、
- 適正な手続き(意見聴取・届出)を行い
- 労働者に周知された時点
です。
多くの場合、「施行日」を定めているはずです。
ただしその施行日が、周知より前の日付になっていると問題が生じます。
周知されていない就業規則を根拠に、
- 懲戒処分
- 減給
- 解雇
- 不利益変更
を行うことは、原則として認められません。
🔷よくある誤解
「労基署に出したから大丈夫」
届出=効力発生ではありません。
「社員は読んでいないけど、配ったからOK」
読んだかどうかではなく、「いつでも確認できる状態にあったか」がポイントです。
「変更前の規則を消してしまった」
これも実務上、よくある落とし穴です。
どの時点で、どの内容が有効だったのか。
履歴が残っていないと、紛争時に立証できません。
🔷まとめ:就業規則は「完成した瞬間」から使えるわけではない
就業規則は、
作成 → 意見聴取 → 届出 → 周知
という流れを経て、はじめて“制度”になります。
そしてもう一つ大切なのは、効力があるかどうかは、トラブルが起きたときに初めて問われる、ということです。
いざというときに、「それ、きちんと周知していましたか?」と問われて困らないように。
就業規則は、作ることよりも、「効力が生じる状態にしておくこと」が重要です。
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