「雇用契約書」と「労働条件通知書」って、何が違うの?

先日、顧問先のお客様から「雇用契約書と労働条件通知書って、どう違うんですか?」というご質問をいただきました。

実際に人を雇う場面で、「とりあえず書類を用意したけど、これで合ってるのか不安」という声は少なくありません。とくにこの2つは名前も内容も似ていて、混同されがちな書類です。

でも実は、それぞれの法的な役割や必要性は違います。
今回は、「雇用契約書」と「労働条件通知書」の違いとポイントをわかりやすくまとめてみました。

1.雇用契約書とは?~「契約」を交わす証拠書類

雇用契約書は、会社と従業員が「労働契約を締結した」という証拠となる書類です。
お互いに署名・押印(またはサイン)を行い、労働条件を合意のうえで取り交わします。

これは民法上の「契約書」にあたり、万一トラブルが発生した際にも、「この内容で契約した」という証明として非常に重要な役割を果たします。

たとえば、「基本給はいくらだったのか」「試用期間の条件は?」「どんな業務に就くことになっていたのか」など、口頭の約束では曖昧になる部分も、雇用契約書に明記しておけば、後々の誤解や紛争を防ぐことができます。

2.労働条件通知書とは?~法的に“渡すこと”が義務

一方で労働条件通知書は、労働基準法で「書面での交付が義務付けられている」書類です。
雇い入れの際に、労働者に対して賃金・労働時間・契約期間などの主要な労働条件を明示しなければなりません。

つまり「渡すこと」が法律上の義務。
こちらは相手の署名や合意がなくても、会社側から渡していれば要件を満たすことになります。

見落としがちですが、出勤日や残業の有無、手当の支給条件などの詳細を明示していなかったことで、「そんな約束聞いていない」と言われてトラブルになるケースは意外と多いものです。

3.どちらを用意すればいいの?~ベストなのは「両方」ですが…

よくあるご質問が、「雇用契約書と労働条件通知書、どっちかだけじゃダメ?」というもの。

結論からいえば、「どちらも用意する」のが望ましい対応です。

労働条件通知書は法的義務を果たすもの。
雇用契約書は合意の証拠を残すもの。
両方そろえておくことで、「義務」と「安心」の両面をカバーできます。

ただし、実務上は、ひとつの書類で両方の機能を持たせることも可能です。
たとえば「雇用契約書(労働条件通知書兼用)」のようなタイトルで、契約書の中に明示義務項目を含め、署名欄を設けておく方法もあります。

4.「テンプレートで済ませて大丈夫?」~自社に合わせた見直しを

ネット上には便利な雇用契約書や労働条件通知書のテンプレートが多く出回っています。
もちろん、ひな型を活用するのは良いスタートです。

ただし、業種・職種・就業スタイル(例:在宅勤務や短時間勤務など)によって、記載すべき内容や注意点は変わってきます。

テンプレートをそのまま使って「あとから困った」というご相談も少なくありません。
例えば、休日出勤やみなし残業、試用期間中の給与など、曖昧なままではトラブルを招くリスクもあります。

一度、自社の実態にあった形で、書類の中身を見直してみることをおすすめします。

まとめ:小さな準備が、大きな安心の「支え」になる

「たった1枚の紙」と思うかもしれません。
でも、その1枚が、あなたの会社と働く人との信頼関係を支える大事な土台になります。

採用のときは忙しさもあり、「とりあえず雇ってから考えよう」となりがちですが、最初にきちんと整えておくことで、後々の安心と信頼につながっていきます。

「うちの会社ではどうすればいい?」と思ったら…

横山社会保険労務士事務所では、雇用契約書や労働条件通知書の作成・見直しについてのご相談を承っています。

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そんなときは、ぜひお気軽にご相談ください。

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